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 '04/10/29 ダイアモンド4C について(クラリティー)
4. クラリティー

ダイアモンドの「4C」を4話に分けて書いてきましたが、最後がダイアモンドの「クラリティー( Clarity )」です。このクラリティーとは、ダイアモンドの透明度を表すものです。この内包物(インクルージョン)は「キズ」と呼ばれ、この「キズ」の大きさや位置などを総合的に判断して、クラリティーの位置づけをしています。この位置づけの基準は G.I.A( 米国宝石学会 ) のシステムを採用しており、日本でも鑑定をするのに必要不可欠な存在になっています。またダイアモンドの鑑定機関は多々あり、その中でわれわれ質屋が信用して扱う機関は数社に限られますが、機関に関しては以前お話をしていますのでここでは省きます。
  ダイアモンドの「キズ」について少し詳しくお話します。ダイアモンドはもちろん天然石なので、長い年月によって自然に結晶に亀裂や内包物 ( インクルージョン ) ができます。また、ダイアモンドを研摩する時に人為的に生じるキズもあります。バークマークと呼ばれる摩擦熱による「キズ」やスクラッチと呼ばれる表面の引っかきキズなどです。これらのキズを含めて判断したのが上記でもお話しました G.I.Aのシステムで11段階に分けられています(下記参照)。ダイアモンドのクラリティーだけの相場を考えてみた場合、この11段階の評価によって価値が大きく変わるということです。
  これで4話に分けて簡単にお話したダイアモンドの「4C」について終わりにしますが、皆様もこの基本的な「4C」を参考にして、より良いダイアモンドを手にしてもらえばと思います。また、最高級(4Cの最上級)のダイアモンドを購入できればそれが1番な事ですが、高価なためなかなか手に入れる事が難しいものです。4Cのうちどれを妥協して手に入れるかなどを考えてみるのも、ダイアモンドを選ぶ際の楽しみの一つになるかもしれません。

FL(フローレンス) 10倍で内部、外部特徴が発見できない。
IF( インターナリ・フローレンス ) 10倍で内部特徴が認められないが、ごくわずかな外部特徴がみられる。
VVS1 10倍で発見が困難な内部特徴をもつもの
VVS2 10倍で発見が困難な微細な内部特徴をもつもの
VS1 10倍で発見がやや困難な内部特徴をもつもの
VS2 10倍で発見がやや容易な内部特徴をもつもの
SI1 10倍で発見がやや容易な内部特徴をもつもの
SI2 10倍で発見がやや容易な内部特徴をもつもの
I1(ピケ) 肉眼で内部特徴を容易に発見できる
I2 肉眼で内部特徴を容易に発見できる
I3 肉眼で非常に容易に見える内部特徴をもつもの




 '04/10/16 ダイアモンド4C について(カット)
3. カット
ダイアモンドの「4C 」の中の「カット(Cut)」の評価の対象になるのは、ラウンド・ブリリアント・カットのものだけです。その他のカットにつきましては、後でお話をしますが、残りの「3C」(カラット・カラー・クラリティー)で評価されます。
 ダイアモンドの輝きは、ダイアモンドがもつ光の強い屈折によって生み出されます。その輝きを最大限に引き出すダイアモンドの理想的なカットが、18世紀ごろに理論的な証明により完成されました。この完成された立体的な枠組み(プロポーション)のことを、「アイディアル・カット」といいます。(カットの説明は、少し難しくなるため省略します)
カットの評価は、このアイディアル・カットに近いものを最上位として(Excellent エクセレント)他減点法によって5段階に評価が下がっていくのです。(下記表参照)
 実際に私がダイアモンドをどう見ているのかを説明してみましょう。ダイアモンド(ラウンド・ブリリアン・カット)を手にしたときに、全体的に見て丸(ラウンド)であるかないかでカットの良し悪しを判断します。その次に全体的に左右対称になっているかどうかを見ます。最後に深さを見ます。光の反射でテーブルからキュレット(先のとがった部分)までの深さ(アイディアル・カットの理想的な深さを基準として)が、浅すぎると下の部分が透けて見えたりするためダイアモンドの輝きがあまりなくなります。ガードル部分(横の部分の事)が写ったりする(スケ石)。また反対に深さが深すぎるとダイアモンドの重量(カラット)はあるにもかかわらず、美しく見えないダイアモンドになってしまいます(ゴロ石)。
 現在日本の主流になっているラウンド・ブリリアント・カット以外のダイアモンドのカットは、いくつかのパターンが開発され、いかにして美しく、無駄のないように原石からカットしていくかを考え決められていきます。また、時代の流行も反映されます。私たち質屋が今日よく目にするカットは、「プリンセス」「マーキス」「オーバル」「エメラルド」「ハートシェープト」「ペアーシェープト」などです。 少しアバウトではありますが、カット以外の「3C 」の評価が、まったく同じである2つのダイアがあるとします。(例えば、Gカラー、Vs1,0.300 )主流のラウンド・ブリリアント・カット(GOOD )とプリンセス・カットでは、前者のほうが値段的にも高いというのが現状です。これは、上記でもお話したようにラウンド・ブリリアント・カットが日本では流通量が多いため主流になるためだと考えられます。
カットのランク付け GIA
1 Excellent(エクセレント)
2 Very Good
3 Good
4 Fair
5 Poor




 '04/09/30 ダイアモンド4C について(カラー)
2. カラー
 日本ではG・I・A (米国宝石学協会)の定めたカラーグレードを基準に、最高のランクをD カラーとし、以下アルファベット順にZ カラーまで等級が分類されていきます。D カラーに近づくほど無色透明なダイアモンドであることを意味し、反対にZ カラーに近づくほど、黄色に近い色合いである事を示しています。
GIA 業界用語 フェースアップしたダイアモンドを肉眼で観察したとき
D ブルー・ホワイト 訓練を積んだ者のみ、ごくわずかな色を感じられる。
E
F ファイン・ホワイト
G ホワイト
H コマーシャル・ホワイト 小さな石はカラーレスと、また大きな石はわずかに色が感じられる。
I トップ シルバー・ケープ
J シルバー・ケープ
K  
L ケープ 訓練をつんでいない者でも色が感じられる。
M  
N  
O ライト ケープ
P  
Q  
R ダーク ケープ 訓練を積んでいない者でも黄色と感じる。
S〜Z  
ダイアモンドの価値は、色に限っていえば上記表のD カラーに近づくにつれて上がっていきます。グレードは、G・I・A で認定を受けた石(マスターストーン;付け石)のカラーを基準として決定します。
 ダイアモンドのグレードは黄色味の度合いで決定されますが、ダイアモンドにもサファイアやガーネットのように、全ての色が存在します。中でもはっきりした色(グリーン、ピンク、ブルー、バイオレット、ブラウン、イエローなど)をファンシーカラーと呼び、上記の基準でグレーディングされるダイアモンドとは、異なる価値を持つものとして位置付けされています。



 '04/09/15 ダイアモンド4C について(カラット)
今回もダイアモンドについてのお話になりますが、基礎的な話のダイアモンドの「4C 」について、何章かに分けてお話をしていこうと思いますので、お付き合いください。 皆さんもダイアモンドの「4C 」という言葉はどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか。ダイアモンドの品質を表す4項目の名称の頭文字「C 」をとって、「4C 」といいます。ダイアモンドの価値は、「4C 」の価値に決定されるのです。ダイアモンドを購入される時、鑑定書を見て判断することもあるかと思います。この鑑定書に書いてある内容が、この「4C 」になるのです。それでは、「4C 」について詳しく見ていきましょう。
  1. カラット(Carat) ・・・重さ
  2. カラー(Color) ・・・色
  3. カット(Cat) ・・・プロポーション
  4. クラリティー(Clarity) ・・・透明度
1. カラット
大きさを表す単位だと思われがちですが、重量を指す単位です。1カラットは0.2 グラムの重さを示します。カラットの語源はカロブ(Carob been:イナゴ豆)または、アフリカ珊瑚樹の種子(Kuara)が由来するものであるといわれています。この豆の実を乾燥すると、ほとんど同じ重さで、一粒が約0.2 グラムでした。この実を使って古代人の人は宝石の重さを量っていたそうです。このカラットという単位は20 世紀初頭から定められている世界共通の単位です。それ以前は、同じカラット表示を用いても国によって微妙な違いがあり、ロンドン・カラット、マドリッド・カラットなど都市名を冠にした呼び方がなされていたそうです。 カラットは、分数(1/10 ct)、または小数点第2位までの少数表示に細分されます。ここで混同してはいけないのは、宝石に使用されるカラットと、金の細工で使用するカラットです。金の場合のカラットは重量単位ではなく、純度を示す単位です。カラット数に比例して、金製品の金の含有量は多いということを示すのです。もちろん重さはまちまちになります。  参考までに、宝石の場合、基本的にはカラットを使うのですが、価値のやや低い石や原石の取引場においては、重量単位に『グラム』が使用されます(例クォーツなど)。また、宝石の中でも真珠に限っては『グレイン』(ラテン語で、粒の意)という重量単位を使います。日本では古い秤量単位である『匁』(もんめ)(1匁=3.75gg=18.75 カラット)を、私の祖父のころまでは一般的に使用していましたが、現在、ほとんどの質屋が使わなくなってきた単位です。(世界のジェームストーン図鑑参照)



 '04/09/01 ダイアモンドについて(其の参)
宝石名 成分 結晶系 硬度 屈折率 比重 分散 屈折性
ダイアモンド C 等軸晶系 10 2.412 3.52 0.044
ホワイトサファイア Al2 O3 三方晶系 9 1.760-1.768 4.00 0.018
ガラス SiO2 非結晶 5.6〜6.0 1.48〜1.70 2.21〜5.00 平均0.037
ホワイトスピネル MgAl2O4 等軸晶系 8 1.726 3.65 0.020
合成キュービックジルコニア ZrO2 等軸晶系 7.5〜8.5 2.15 5.9〜6.0 0.060
GGG Cd2Ga5O12 等軸晶系 6.5 2.03 7.05 0.038 0.045
YAG Y3AL5O12 等軸晶系 8 1.833 4.55 0.028
ジルコン ZrSiO4 正方晶系 7.0〜7.5 1.925-1.984 4.4〜4.7 0.038
合成ルチル TiO2 正方晶系 6.0〜6.5 2.612-2.903 4.20 0.330
チタン酸ストロンチウム SrTiO3 等軸晶系 5.5 2.410 5.13 0.190
モアサナイト SiC 六方晶系 9.25 2.65 3.21 0.04
上記のように、主なダイアモンドの類似石10個を表にしましたが、まだまだたくさんの類似石があります。少し難しくなってしまいましたので、簡単に説明をしますと、「ダイアモンドについて(其の弐)」でお話したように、科学的に分類したものを比較していけば、ダイアモンドとの違いが分かってきます。
  1. ダイアモンドに比べて硬度の低い類似石は、どうしても角が鋭角になっていません。
  2. ダイアモンドに比べて屈折率が劣る類似石は、どうしても輝きが鈍くなっています。
  3. ダイアモンドに比べて分散度が高い類似石は、ギラギラとした虹の色が出て輝きが違ってきます。また、反対に分散度が低い類似石は、殆どファイアを見ることができません。(ファイアとは光が通過するときに、七色の虹色のきらめきを見せます。この虹色をファイアといいます。)
  4. ダイアモンドは単屈折性です。類似石には、複屈折性の宝石もあり、ダブリングが現れます。(ダブリングとは透明な方解石の結晶を通して下の文字などを見ると二重に見えることで二重像現象とも呼びます。)
  5. ダイアモンドに比べて比重が大きいGGG(スリージー)は、小さいとわかりにくいが、Tキャラやそれ以上になると、比重が倍以上に大きいため、持った感じである程度は分かってきます。ただ、忘れてはいけないのは、これは裸石の場合であって、質屋に持ってこられる場合は、普通は指輪などの製品になっているという事です。
このように、10個の類似石を比較して簡単に説明をさせてもらいましたが、分かりにくかったとか、難しかったという人のために、次回もう一度基礎からダイアモンドについて『4C』を説明していきたいと思います。



 '04/08/15 ダイアモンドについて(其の弐)
其の壱の天然ダイアモンドと類似石との違についてお話をする前に、科学的にどのような項目によって比較をしていくのかを最初にご説明します。
  1. 化学成分
    化学成分とは、皆さんもご存知でしょうが、ダイアモンドの場合は単一の元素(炭素)で構成されている唯一の宝石(元素鉱物)です。この美しく最高の硬さをもつ物質が、やわらかくて時には汚れのひどいものの表現として使われる炭や油煙や、鉛筆の芯などでなじみ深いグラファイト(石墨)と同じ成分の炭素からできているというのは、驚きではないでしょうか。
  2. 結晶系
    宝石はいろいろな結晶になって産出されますが、その結晶は結晶内に設定された結晶軸の特質によって分類する事ができます。そうすると、たくさんの宝石・鉱物が六つの結晶系に分ける事ができるのです。(英・独は七結晶系)ダイアモンドの場合は「等軸晶系」といって前後軸・左右軸・上下軸の三本の結晶軸の長さが等しく、その三本の結晶軸が互いに直交するものをいいます。だから、単体の炭素原子が立体的に結合し、強固な結びつきになっています。このため、ダイアモンドは最高の硬度と言われているのです。
  3. 硬度
    一般的にあらわす「硬度」とは、モース硬度のことをあらわし、硬さを数字で表したもので、ダイアモンドを「10」とした時にその他の鉱物を分類して位置づけたものです。その他にヌープ硬度という硬さをあらわす測定方法もあります。
  4. 屈折率
    光が密度の違う媒体(光を通過する物質)の中に入るとき、その光線は境界面で折れ曲がり(法線方向に)、進む方向を変えます。これを光の屈折といいます。屈折率は物質中でのその曲がる度合いのことで、屈折率が高いほど、法泉に近づくということです。ダイアモンドの屈折率は「2.417」です。
  5. 屈折性
    T.単屈折性(光学的等方性)とU.複屈折性(光学的異方性)に分類されます。T.どの方向にも等しい光学的性質(屈折率、光の性質)を示します。・・・等軸晶系(ダイアモンドなど)や、非晶質  U.方向によって異なる光学的性質を示します。・・・複屈折性には一軸性と二軸性があります。ダイアモンドは「単屈折性」です。
  6. 比重
    ダイアモンドの比重は「3.52」です。
  7. 分散率
    プリズムに太陽光線(白色香)を通過させると、それぞれ波長が違うため構成色は虹の七色に分散します。波長のもっとも長い赤の屈折は最小で、反対に波長のもっとも短い紫の屈折は最大となります。簡便にするため、屈折率は黄色で測定をします。そして、赤と紫の屈折率の差が分散率の測定基準となります。ダイアモンドの分散率は「0.044」です。
このように、(1)から(7)までのダイアモンドの特徴を思い出しながら、類似石を比較していこうと思います。そうすれば分かってくるのではないでしょうか。



 '04/07/31 ダイアモンドについて(其の壱)
永遠の輝きダイアモンドは、世界中の人たちがあこがれる宝石の一つで、歴史的にもダイアモンドは多くの伝説を作ってきています。それだけにダイアモンドに代わる物として、多種多様な類似石が出回ってきました。 ひとつに類似石といいましても、大変多くの種類があります。合成石もあれば天然石もあります。その中で、われわれ質屋がどのようにして天然のダイアモンドと類似石を見分けるかということに少し触れてみたいと思います。
透明石をお客様が持ってこられた時に、まずその石が、
(1)ダイアモンドか類似石か
(2)ダイアモンドなら天然か合成か
(3)そのダイアモンドは処理されているかいないか
3 点を瞬時に判断して、それから以前お話をしました4C について考え(10 倍ルーペや顕微鏡を見ながら)値段を付けていくのです。
(2)の天然か合成かの判断につきましては、「合成ダイアモンド」は、工業用途として数十年前から製品開発されていますが、まだ生産コストが高いため、天然のダイアモンドと比較すると割高になります。このため、将来のことは分かりませんが、今のところは合成ダイアモンドが装飾品として質屋に持ち込まれることはないといって良いと思います。また(3)に関しましては、天然のダイアモンドを処理する事によって、見た目を美しくします。例えば、「レーザードリルホール」というレーザーによってダイアモンドに含まれているカーボン(黒点)を粉砕する処理が有名です。この場合は、顕微鏡やルーペで角度を変えて見ることによってレーザーの通り道を看破します。また「含浸」という処理法があります。これは、いろいろな宝石に使われますが、ダイアモンドの場合はI クラスのクリベージ(ワレ)に高屈折率物質(鉛ガラスなど)を溶け込ませる事によって、クリベージを隠し、見かけ上透明にするのです。この場合についても、顕微鏡やルーペで看破するのが最も有効な方法でしょう。また、最近では、イエローまたブラウンダイアモンドを高温高圧で処理する事によって、色をピンクにしたりブルーにしたり、またゴールドにしたりする事が出来るようになりました。色が極端に付くため、遊び心のある見た目に美しい宝石(ダイアモンド)にはなりますが、いうまでもなく天然ダイアモンドでは通りません。市場価格も天然ダイアモンドに比べて安価になってきます。天然ダイアモンドのピンク、ブルー、イエローを知っていれば、その色の濃淡で比較的簡単に判別できるでしょう。また(1)の類似石の種類については、この後分かりやすく説明をしていくのですが、その前に天然ダイアモンドを科学的に見ていきましょう。そうする事により、類似石とどこが違っているのか分かってくるのではないでしょうか。



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