目利きのいろはメニューへ

 
 '05/08/18 コランダムについて(サファイア編・2)

このシリーズも最後になってしまいましたが、今回はブルーサファイア以外のサファイア(ファンシーカラー・サファイア)について、お話しようと思います。サファイアには虹で見られるような7色すべてのサファイアが存在します。赤はルビーと呼ばれ、青は一般的にサファイア(ブルーサファイア)と呼ばれます。その他の色については「○○サファイア」と呼び色名の後にサファイアをつけます。

  1. パパラチア・・・
    このパパラチアというサファイアは酸化アルミニウムとクロムとニッケルの混入によって、微妙な色味出てしています。パパラチアについては「コランダムについて(1)」でも少しお話しました。その名はスリランカの言葉で「蓮の花」を意味します。オレンジがかったピンク色のサファイアで、ピンクが強すぎてもオレンジが強すぎても「パパラチア」と呼ぶことが出来ません。そのような微妙な色合いの宝石ですから、日本の市場では大変高価な宝石のひとつに数えられます。
     
  2. ピンクサファイア・・・
    ピンクサファイアは酸化アルミニウムにクロムが混入することによってピンクの色がついてきます。ルビー編でお話したように、このクロムが1%以上になってきますとルビーのように赤くなってくるのです。このピンクサファイアはファンシーカラーのパステルピンクから、ルビーに近いレディッシュピンクの彩りに広がっている宝石です。ルビーの場合は赤色のみの濃淡で表現しますが、ピンクサファイアの場合は赤紫色の濃淡も入ってくるので、ルビーの色相とピンクサファイアの色相が明確に区別されます。とはいうものの、ピンクサファイアに含まれるのかルビーになるのかを判断するのは、充分に経験のある我々でも、難しい色合いのものもあります。ここに面白いエピソードがあります。タイ産のルビーを買ってきて日本で鑑別機関に出したら、結果がピンクサファイアになってしまいました。これは、タイは日本より紫外線が強いため、ミャンマー産(タイ)のルビーは紫外線に反応してさらに赤く蛍光します。そのためタイで見た時と日本で見た時では色合いが変わってしまうからです。
     
  3. バイオレットサファイア・・・
    青みの濃いサファイアは、ブルーサファイアとして鑑別されますが、紫が入った色味のサファイアは、バイオレットサファイアと呼ばれています。アメジストのような色味のものから、タンザナイトのように照りのあるものまで、さまざまな色のサファイアがこう呼ばれています。
     
  4. イエローサファイア・・・
    イエローサファイアは酸化アルミニウムにニッケルが混入することにより黄色の色味がついてきます。最も色の乗ったイエローサファイアをゴールデンサファイアと呼びます。イエローサファイアは価格的にはゴールデンサファイアに比べて安いです。反対にゴールデンサファイアは産出が稀であるため、価格も高価になってきます。
     
  5. グリーンサファイア・・・
    グリーンサファイアは酸化アルミニウムとコバルトが混入することによって緑の色味がついてきます。また視覚の問題ですが、ブルーのサファイアとイエローサファイアの混在によりグリーンの色味に見えるときもあります。このグリーンサファイアはエメラルドのようなきれいな色合いをしたグリーンサファイアは、ほとんど稀であります。どちらかというと暗いグリーンサファイアが多く、価格的にも安価なものが多いです。
     
  6. ホワイトサファイア・・・
    ホワイトサファイアは酸化アルミニウム以外の別の元素の混入がありません。そのため色が付かず無色になるのです。最近でこそ、私が目にしなくなってきましたが、指輪などの宝石の取り巻きの石に、現在はメレーダイアやテーパーダイアなどダイアモンドを取りまいて、そのメインの宝石を引き立たせています。しかし、昔はダイアモンドを使うのではなく、ホワイトサファイアなどを取り巻いていました。またホワイトサファイアは時計の風防ガラスに使ったり、レコードの針に使ったりとたくさんの用途がありました。絶縁性が良く熱伝導率が良いため、半導体の基盤として利用されています。しかし、この場合は天然のホワイトサファイアを使うのではなく合成ホワイトサファイアを使用しています。
  7. このように、かけあしでコランダムについてみてまいりました。ルビー、サファイアがもっと身近に感じてきたのではないでしょうか。




 '05/07/31 コランダムについて(サファイア編・1)

「サファイア」はルビー編1,2で述べたように、同じ酸化アルミニウム(Al2O3)が結晶したものであります。その中でも純粋なものは無色なのですが、主成分以外に含有された微成分の差によって色が違ってきて各色を示します。赤色のみが「ルビー」と呼ばれ、その他の色のものを「サファイア」と呼びます。

 この「サファイア」という言葉はラテン語で「青」を意味し、中世までは「サファイア」といえばラピス・ラズリの事を言っていました。その後、青いコランダムの事を指すようになり、鉱物種の理解が進むと、青い「サファイア」に限らず別の色のコランダムも「○○サファイア」と呼んで、「サファイア」の一種である事を誇示するようになって来ました。「サファイア」は紀元前7世紀以降、ギリシャ、エジプト、ローマでジュエリーとして使われ、中世にも広くヨーロッパの王たちにも好まれた宝石でした。 

まず「ブルー・サファイア」についてお話しようと思います。「ブルー・サファイア」には、不純物として鉄とチタンが含まれています。純粋なコランダムの結晶は無色ですが、「サファイア」のように鉄とチタンが混入すると、赤色と黄色の光が結晶に吸収されます。その結果、結晶の通過する光は、青色となります。不思議な話ですが、チタンだけでは色がつかないのです。「ブルー・サファイア」の最もよい色と形容される色は「コーン・フラワー色」といわれます。この色は柔らかい光沢を放つ紫がかった濃いブルーの矢車草の花に色が似ていることから、そういう風に呼ばれるようになりました。この色の「サファイア」はカシミール地方で多く見られましたが、現在この地方では採れなくなったため、幻の逸品とされています。これに次ぐやや濃い青色の「ロイヤル・ブルー」は、ビルマ産のサファイアの特徴であります。スリランカ産の「サファイア」は淡色ぎみであり、ビルマ産の方が価値は高く見られています。しかし、ビルマ産の「サファイア」も現在ではほとんど産出されていません。今お話したようにスリランカ産の「サファイア」は全体的に色がやや薄いものが多いが、弱い光の下では美しく映え、色が濃いカシミール産やビルマ産が濃すぎて見えるのとは対照的であります。このスリランカ産の「サファイア」は熱処理されるものが多いのです。薄いベージュの「サファイア」の原石に、一定の高温を加えると青く変わる現象を「ギウダ」といいます。この「ギウダ」は、一度青くなったものは半永久的に変わらないとされているため、エンハンスメントとして市場に流通しています。その他の産地にはタイやオーストラリアなどから「サファイア」が産出されますが、多くはブルーが黒すぎるのが特徴で価値はそんなに高くないのです。

  次回は「サファイア」にはいろいろな色がある事は述べたと思いますが、主な色の「サファイア」について簡単にお話しようと思います。




 '05/07/15 コランダムについて(ルビー編・2)

 今回は「ルビー」の類似石、処理石、合成石について簡単にお話しようと思います。昔は赤色の石が産出された場合、それが「ルビー」か否かを見分ける手段がなかったようです。ここに類似石の面白い話があります。

 イギリス王室の第一公式王冠の正面に世界第二番目に大きいダイアモンド(カリナン第二石、317カラット)(1キャラット=0.2グラム)がつけてあり、それと肩を並べてセットされているのが、通称「黒大使のルビー」と呼ばれる宝石です。このイギリスの「黒大使のルビー」と呼ばれる大粒の宝石は、14世紀半ばのスペイン王ペトロが黒大使エドワード皇太子に勝利のお礼として贈ったものです。後にヘンリー5世が王冠の中央につけて出陣し、危ないところをこの宝石の発した一筋の輝きに助けられ、勝利を収めたという歴史的に有名なエピソードがあります。それ以来、この宝石はイギリスの王冠の中央にはめ込まれ、現在に至っているのです。この「ルビー」と思われていた大粒の宝石が実は「レッド・スピネル」であったという事(科学的な検証により)も現在では有名な話になっています。同王室所蔵の「チムール・ルビー」(エリザベスの所有でムガール帝国の皇帝の名が刻まれる352キャラットの見事なネックレス)も同様に「レッド・スピネル」であった事が立証されています。このように、見分ける手段がなかった昔は、赤色石はほとんど全部を「ルビー」と呼んでいました。現在は屈折率などで簡単に分かります。成分が違うためすぐに判別する事ができるのです。

 処理石について少しお話してみましょう。前回も述べたように熱処理(焼き)はエンハンスメントとしてほとんどの「ルビー」に施されています。また、色の改変を行う処理の事をトリートメントといいます。赤色のオイルを含浸させたり、ガラスを天然石の中に充填する事により、色の改変を行ったり、他には拡散処理といって天然石の色の悪いものを表面に最大でも0.5ミリぐらい赤を染み込ませたりする方法があります。いずれも色の悪い「ルビー」を改変させる処理のことです。これらのすべてがトリートメント(処理石)となり天然のエンハンスメントの「ルビー」に比べて価値がほとんどない商品になります。

 また、もう一つ厄介なのは「合成ルビー」の存在です。この合成石は天然石と同じ成分(Al23)でできています。このため、屈折率などで看破をしようと思っても、当然同じ屈折率であるため看破する事ができないのです。しかも、この合成石は天然石に比べて不純物が入らないため、美しく価格的にも安価な状態で市場に出回る事が多いのです。この合成石の製法としてはたくさんの方法がありますが、それはまたの説明にするとして今回は省略します。しかし、分かりやすい合成石から、今問題になっているような分かりにくい合成石までありますが、顕微鏡などを使いながらインクルージョンなどで看破していかないといけないのです。

 このように我々質屋は、「ルビー」の美しい色やテリを見て値段を付けたり判断するのですが、その前にまずしなければいけないのが、この赤色の石が本当に「ルビー」であるのかないのか。そして、その後に「ルビー」であるなら、その石が処理していない石なのか、そして、その石が合成石でないのかどうかを判断しないといけません。その判断をして「天然ルビー」であれば、そこから「ルビー」の価値の判断になるのです。




 '05/06/30 コランダムについて(ルビー編・1)

今回も、コランダムの中の赤色石「ルビー」について簡単にお話しようと思います。「ルビー」はいろいろな国で産出します。ビルマ(ミャンマー),タイ,スリランカ、ベトナム,カンボジア,東南アジアなどです。最近ではアフリカ大陸の一部から「ルビー」が採れるようになりました。ここで皆さんにご質問ですが"ピジョン・ブラッド"という言葉を聞いた事があるでしょうか。この言葉は読んで字のごとく"鳩の血"と訳すのですが、ルビーの色の事を表します。そう鳩の血のように赤い色のものが最高級のものとされている色の例えの事です。"ピジョン・ブラッド"の「ルビー」のほとんどがビルマ(ミャンマー)産で、このビルマ産の「ルビー」の特徴は、必要な濃度を保ちながら柔らかみのある赤色である事です。良質のビルマ産「ルビー」は三つの評価に分かれます。一つ目は色がピンクっぽいもののインクルージョン(内包物)が少なく輝きがよいもの。二つ目は"ピジョン・ブラッド"よりも濃すぎてやや黒すぎるものの、インクルージョンが少なく輝きがよいもの。そして、三つ目は最高の評価が下される"ピジョン・ブラッド"の色を持った石のグループです。しかし、残念な事にインクルージョン(内包物)が多く、輝きが良くないものがほとんどです。色・インクルージョン(内包物)・輝きの三拍子そろった、しかも3キャラット(石の重さ1キャラット=0.2グラム)以上のビルマ産「ルビー」はほとんどお目にかかれないというのが現状です。ここ数年、日本でも品質の良い「ルビー」を購入したいという消費者が多くなり、需要が供給に追いつかないという状況になっています。このため希少性もある品質のよい「ルビー」の資産価値が上昇していくのは間違いないと思います。

 次に世界の市場に出回っているルビーの八割程度を占めている産地の「ルビー」がタイ産のものです。このタイ産の「ルビー」の特徴についてお話しますと、輝きはよいが透明度は落ち、やや黒味がかった赤がほとんどです。その「ルビー」の赤を"ビーフ・ブラッド"(牛の血)と形容する事があります。だからといってタイ産「ルビー」のすべてがビルマ産(ミャンマー)よりも劣るという訳でもなく、ビルマ産の「ルビー」を凌ぐ評価を与えられる逸品も非常に稀ではありますがあります。またタイ産の「ルビー」の黒味を取り除くために「焼き」と呼ばれる過熱による処理方法があります。最近ではタイ産の「ルビー」ほとんど、この処理を施されているため、「焼き」は一般的な処理になってきています。反対に無処理の天然ルビーにお目にかかる方が珍しくなってきました。そのため無処理の天然ルビーは大変高額になっています。この「焼き」という処理は鑑別機関なども"エンハンスメント"としてコメントしているものです。以前もお話した事ですが、少し"エンハンスメント"についてお話します。その宝石が元々持っている潜在的な美しさを、人的手段で引き出そうとする改良の事です。もしかしたら、その石が産出した状態でも、条件次第では、「焼き」をしなくても、良い色になっていたかもしれないという程度の改良です。しかもその効果は永続しなくてはいけません。最近の宝石ブームにより、よい色の宝石が少なくなってきました。地球上でそんなに次々と宝石が出来ているものではなく、たまに新鉱山が発見されたとしても、需要と供給が間に合うわけでもなく、その他の石では手を加えないと宝石としては呼ぶ事が出来ません。このため「焼き」などの処理が現れてきたという訳です。  次にスリランカ産の「ルビー」についてお話しますと、タイ産の「ルビー」に比べて対照的に明るい色が特徴です。色相を示す形容も対照的で"チェリー・ピンク"と呼ばれています。品質的にはそんなに良質の「ルビー」はほとんどないといってもいいでしょう。

 このように一口に「ルビー」といえども、産出国によっていろいろな「ルビー」があります。色や大きさなどはもちろんの事ですが、ここでもう一つ重要な事があります。それが、上記でも少しお話しました"エンハンスメント"ではない"トリートメント"の処理石と「ルビー」に色などは似ているが「ルビー」ではない類似石です。次にその事について少しお話していきましょう。




 '05/06/15 コランダムについて(2)

今回もコランダムについてお話しようと思います。
コランダムはアルミニウムと酸素で構成された鉱物で、化学組成はAl2O3です。そこに別の元素が少しでも混入してきますといろいろな色になります。ルビーの場合はクロムが原因で赤になります。このクロムのわずか1パーセント程度が一番良いとされていて0.1パーセントぐらいになるとルビーには届かずピンクサファイアとなります。また、5パーセント以上になると灰色になり価値がなくなってしまいます。またサファイアの青の色については鉄やチタンが微量に含まれる事によるのが原因になります。またその微量に含まれるバランスによってサファイアの色も様々になります。

コランダムは大変硬い鉱物です。この鉱物の硬さを1〜10までの整数値で表した固さの尺度をモース硬度といい、コランダムは9になります。このモース硬度について少しお話しますとドイツの鉱物学者(フリードリヒ・モース)が鉱物・宝石の硬度を示す基準として考え出しました。その測定方法は単純で別名「引っ掻き硬度」ともいい、最もやわらかい鉱物から最も硬い鉱物までの10種類の基準の鉱物を選定して、その基準となる鉱物をこすり、引っ掻き傷の有無で測定をします。この数字の事をモース硬度といいます。ここで10段階に分けられた中で最も硬い鉱物(モース硬度10)はいわずと知れたダイアモンドです。ということはコランダムの硬さは、ダイアモンドの次に硬い鉱物なのです。とはいえダイアモンドと比較した場合はダイアモンドの方が140倍硬いというのには驚きではないでしょうか。じゃあ、ここであまりダイアモンドやコランダムだといっても、身に付ける事はあっても、硬さについてピンとくる人は数少7ないと思います。ですから身近にあるもので比較すると石英、水晶などがモース硬度「7」になります。また、陶器は5〜6ですし、磁器など7〜8ですから、いかにコランダムが硬いかというのがわかると思います。この硬さを利用して宝石にならないコランダムの鉱物を粉にしてレンズやガラスの研磨剤として使います。またよく見る横断歩道の白い部分や道路などがピカピカと輝いているのを見かけたことがないでしょうか。この輝いているものは白線のペンキなどにコランダムを混ぜて靴がすべるのを防ぐためや車のタイヤがすべるのを防ぐために混ぜられているのです。何気なく通る横断歩道もコランダムの鉱物が使われているとは驚きではないでしょうか。




 '05/05/31 コランダムについて(1)

 皆さん「コランダム」という言葉を聞いてピンとくるでしょうか。もしピンとくれば、その人は宝石の事を良く知っている方か、宝石の本を読んでいる人だと思います。「ルビー」「サファイア」という宝石の名前はたいていの人が知っているでしょう。そう、難しくタイトルを書いてしまいましたが、この「ルビー」と「サファイア」の事を「コランダム」といいます。それでは、「コランダム」についてお話を進めていきましょう。

 コランダムのルビーは比較的古くから存在する宝石です。ただ「ルビー」と「サファイア」が同じ鉱物の仲間だというのが分かったのはかなり最近の1783年のことです。それまではコランダムは色や形によって別々の鉱物だと思われていました。国によっては呼び名も違っていました。ようやく、それ以降成分の研究が進んできて1798年にコランダムという名前に統一されたのです。

このコランダムは日本語で鋼玉(こうぎょく)といいます。コランダムという用語は、タミール語の「kurundam」とサンスクリット語の「kuruvinda」に由来しています。両方ともルビーを意味する言葉です。コランダムはその種類を色で分けられますが、鉱物界と宝石界では色によって分類されたコランダムの名称が少し違ってきます。赤色のコランダムは宝石界でも鉱物界でも、ともに同じ「ルビー」と呼ばれています。サファイアは宝石界ではどのような色でもサファイアを後につけます。例えば黄色のサファイアであればイエローサファイア、無色の透明なサファイアであればホワイトサファイアと呼び、緑のサファイアであればグリーンサファイア、黄金色のサファイアであればゴールデンサファイアなどと呼びます。しかし、鉱物界の場合は青色のサファイアのみを「サファイア」と呼びその他の色彩のものは単に「コランダム」と呼ぶのです。

宝石界では一つだけ特殊な呼び方をするサファイアがあります。ピンクがかったオレンジ色のサファイアです。このサファイアの事を「パパラチア」と呼んでいます。この「パパラチア」の色はピンクが強すぎてもオレンジが強すぎても「パパラチア」と呼ばないほど微妙な色合いです。「パパラチア」はスリランカでしか採れないため特に希少性が高いといわれています。「パパラチア」の名前の由来はスリランカの蓮の花の色が「パパラチア」の色に似ているため名づけられたという事です。この「パパラチア」の石を使った指輪やプチネックレスなど「太田質店」にも持ち込まれる時があります。確かに綺麗で私などが見ても魅了される色合いではありますが、この微妙な「パパラチア」の色合いにいつも難さを感じております。もし「パパラチア」の範囲に入らなかった場合は、「ピンクサファイア」になります。「パパラチア」の色が微妙であるため、「パパラチア」か「ピンクサファイア」かの判断が大変難しくなります。鑑別書がない状態で持ち込まれた時には、なかなか「パパラチア」で査定するのが難しいのが現状です。

今回、コランダムについて少し分かりやすくお話しましたが、次回もう少し詳しくコランダムについてお話していこうと思います。




 '05/05/15 版画について

「太田質店」の取り扱い品目にもあるように、質屋はいろいろな商品を取り扱います。メインは貴金属やブランドの商品ですが、少数派ながら骨董や絵なども質草として持ち込まれます。  

「太田質店の歩み」でもお話をしていますが、昔(祖父の時代)はやかんや鍋、着物などを扱っていました。掛け軸や刀など、取り扱いが難しい質草も扱っていたのを記憶しています。そういう品の鑑定は、その方面の専門家に負うところが大きいのですが、時代の流れかその専門家の数が少なくなってきているように思われます。もともと取り扱いの難しいものが輪をかけて・・・、の状態です。

そんな美術品の中で、版画(シルクスクリーンやリトグラフなど)は比較的取り扱う頻度の高いものです。作家の数も多く、真偽の判定も難しいのですが・・・。私もいろいろと勉強しています。本を読んだり、知らない作家はもちろん調べたり、質屋でそういう絵を専門に取り扱うところに相場を聞いたりしながら勉強しています。しかし、取り扱いの多い商品(貴金属やブランド物など)でしたら相場も分かってくるのですが、たまにしか取り扱わない絵は容易ではないです。
ここで、主な作家による版画の技法を説明してみましょう。

シルクスクリーン(silkscreen)

ヒロヤマガタなどが主に使う技法で、多くの作品があります。「太田質店」では、ヒロヤマガタの作品は比較的多く取り扱っています。セリグラフともいわれる孔版の版画です。木枠または金属の枠に絹、ナイロン、ステンレス、スティールなどのスクリーンを張り、その細かい折り目を通して、スクィージと呼ばれる平らなゴムを使って絵の具を版の下に置いた紙に刷り込みます。特徴としましては、あらゆる素材、形状に対応できることです。しかも、厚さや平面、曲面等の素材の形状に関係なく印刷が出来る点です。

リトグラフ(lithograph) 石版画と呼ばれ平版の版画です。水と油の反発を利用し、平面の油部分のインクを摺りとります。石版(炭酸カルシウムを主成分にした)の上に、油性の強い墨、鉛筆、チョーク、クレヨンで作画して、その上に滑石粉末と硝酸を加えたアラビアゴム液を塗ると、化学変化を起こし、作画した部分にだけインクが付着します。そのインクを紙に写し取る事で色をつけていく技法です。主な作家で東山魁夷などです。私も岡山の美術館にきた時には見に行きます。
ジークリー(giclee) ジークリーはデジタル・リトグラフといわれ、最新のコンピューター技術を使った版画技法です。リトグラフやシルクスクリーンなどとは異なり、版は使用せず、最新のコンピューター技術を使いダイレクトにインクを版画紙に拭きつける技法です。 原画をコンピューターで解析し厳密に測定した上で、ミクロ粒子のジェット噴射を行い、色彩は七万色以上もの微妙な発色が可能です。非常に繊細な線のタッチや微妙な色彩の変化。色彩の揺れなども逃さず再現する事が出来ます。この技法を使って作成している画家の中では「シム・シメール」が有名です。この作家はホワイトライオンや虎などの動物を表現する作品で有名です。

版画の技法の一部分を紹介させてもらいましたが、このような技法により作成された作品で有名な作家は多くいます。また、反対にこれから有名になるであろう作家もいますので、先見の明を持ちながら勉強していかなければいけないと感じています。




 '05/04/15 ブランドの歴史について (ルイ・ヴィトン)

このテーマで以前お話をしましたが、今回は我々質屋が一番多く取り扱っているであろう(それは大げさかもしれませんので太田質店では一番多く取り扱っている)ブランド「ルイ・ヴィトン」についてお話をしようと思います。

このブランドは高い創造性と品質を誇るブランドとして、世界にその名を知られるようになってきました。もちろん最近は日本国内でも多くの「ルイ・ヴィトン」商品が出回るようになってきました。それに伴い、我々質屋にも多く持ち込まれるようになりました。ただ、頭に入れておかなければいけないことは、このブランドは常に新しい分野の製品の開発に力を注いでいるということです。そんなに知られていなかった時計やジュエリーの分野にまでも最近は進出してきました。こうした努力により、ますますブランドの中でも選りすぐられたメーカーになってきたと思います。

 ちなみに(後述する年表を見ても分かると思いますが)、昔からブランドバックのメーカーとして存在してはいたのに、なかなか一般の人が手に入れることが出来なかったのは、商品が高額だったのはもちろんのことですが、販売店が少なかったということもあります。最初に「ルイ・ヴィトン」の商品を手にした日本人はどこの県の人だと思いますか。意外にも(!?)高知県 ( 土佐 ) の人だったみたいです。高知県の人は流行の最先端をいっていたのでしょう。

  まず、この「ルイ・ヴィトン」を作っている会社について。1987年に「ルイ・ヴィトン」社とモエ・ヘネシー社の合併によって「LV・モエ・ヘネシーグループ」が設立されました。この会社が現在の会社です。このグループにはもちろん社名にもあります「ルイ・ヴィトン」、それとお酒の「ヘネシー」や「ホワイトホース」などの洋酒を販売している会社が属します。また、その他に、(1)クリスチャン・ディオール(2)エミリオ・プッチ(3)マーク・ジェイゴブス(4)フェンディー(5)ダナ・キャラン(6)トーマス・ピンク(7)ジバンシー(8)ケンゾー(9)クリスチャン・ラクロワ(10)ロエベ(11)セリーヌ(12)ベルルッティーなどがこのグループの傘下にあるのです。しかも、ウォッチ・ジェエリー部門には、(13)タグ・ホイヤー(14)ショーメ(15)エベル(16)フレッド(17)ゼニス(18)クリスチャン・ディオール(19)オーマス ( 高級文房具 ) (20)デブアスLV ( デビアスグループと折半出資による合弁会社 ) などがあります。ですから、「ヴィトンは好きではないけど、ロエベは好き。」などといっている人がいても、結局一緒のグループの物を好きになっているということになります。ただ(1)から(20)までのブランドの各々が独自の特徴を持ち、消費に与えるイメージも違うため一概にそう言える事ではないのですが、グループは同じという事を覚えていたら、違った見方も出来るのではないでしょうか。

 それでは、「ルイ・ヴィトン」の歴史についてお話していきましょう。


1821年

創業者ルイ・ヴィトン( Louis Vuitton )生まれる。

1835年 14歳になった初代ルイ・ヴィトンは、養母との折り合いが悪くなり、わずかなお金を持って家出。2年後、パリに着いたルイ・ヴィトンはオペラ座に近いカプシーヌ大通りにあった荷造り用木箱製造兼荷造り職人の見習いになる。
1854年 パリのカプシール通り4番地に世界初の旅行靴専門店をオープン。従来は蓋の丸いトランクから、灰色のキャンバス地を使った積み重ねのできるトランクを作成。
1857年

ジョルジュ・ルイ・ヴィトン誕生 ( 創業者ルイ・ヴィトンの長男、2代目当主 )( George Louis Vuitton )

1860年 パリ郊外アニエール市の現在地に工場を移す。
1867年

パリ万博博覧会においてトランクが銅メダルを受賞。

1868年 亜鉛を素材にした丈夫なトランクを考案する 。
1872年

ベージュをベースに赤のストライプ模様の入った「レイエ・キャンパス」が考案された。

1875年 ドレス専用ケース「ワードローブトランク」を発表。
「レイエ・キャンパス」が茶色とベージュに変更。
1880年

「ルイ・ヴィトン社」の経営が2代目ジョルジョ・ルイ・ヴィトンに引き継がれる。

1883年 ガストン・ルイ・ヴィトン誕生(ジョルジュの長男、3代目オーナー)
1885年 イギリスのロンドンに海外1号店をオープンする 。
1888年

市松模様の「ダミエキャンパス」が発表される。
このダミエ・ラインは日本の市松模様をヒントに考案された。しかし、人気が高くなりコピー商品が多くなったため、数年の間トランクに使用されただけで姿を消してしまったモデルです。

      
1890年 2代目当主ジョルジョが世界初の5枚羽の真鍮製キーユニットを考案し特許を取得する。
1892年 創業者ルイ・ヴィトンが逝く 。
オーストラリアで初めてルイ・ヴィトンの製品を発表。
1894年 インドシナにてアジアで初めてルイ・ヴィトン製品が発売された。
1896年

LVと3種類の花と星をあしらったモノグラム・キャンパスが誕生(これはニセモノのコピー商品対策として考案された)

1898年 アメリカのデパートにルイ・ヴィトン製品が置かれるようになった 。
1901年

現在も販売されるスティーマーバックは船や汽船で旅行する人たちが旅行中に洗濯物を入れるカバンとして誕生した。

1908年 キャンピングカー自動車デザイナーのケルネルの協力でキャンピングカーの先駆けとなる自動車をデザイン。
1909年

ヘリコプターパリの航空ショーでヘリコプター・ヴィトンを展示。

1911年 ガストン・ルイ・ヴィトンの長男として4代目当主アンリ誕生。
1914年 シャンゼリゼ通り70番地に世界最大の旅行用専門店のパリ本店をオープン。
1924年 現在も人気が高いキーポールは当初トランクやスーツケースに入れて使用する補助バックとして誕生する。
1925年 ココ・シャネルの依頼によりアルマを製作。
1932年 巾着カバンのノエはシャンパンを持ち運ぶために考案された。
1936年 2代目ジョルジュ・ヴィトンが死去する。
1951年 3代目当主ガストンの次男クロードの長男として5代目当主パドリック・ルイ・ヴィトンが誕生( Patrick ・ Louis ・ Vuitton )。
1954年 創立100周年を迎え、本店をパリのシャンゼリゼ通りの本店をマルソー通り78番地に移転する。
1959年 現在のモノグラムの素材であるトワル地のソフト・キャンバスコットン地に樹脂加工を施したものを発表。
1970年 3代目当主であるガストン・ルイ・ヴィトン死去する。
1978年 東京と大阪にアジア初めての支店がオープン 。
1981年 ルイ・ヴィトン ジャパンとして株式会社を設立し、直営店1号が東京銀座にオープン。
1983年 世界最大のヨットレース「アメリカズカップ」のスポンサーになり、予選がスタート。
1984年 パリ証券取引所及びニューヨーク証券取引所に株式を上場する。
1985年 クレイン ( 型押し ) レザーを使用したエピ・ラインを発表。
1987年 モエ・ヘネシー社とルイ・ヴィトン社とが合併して世界最大のブランド流通グループ企業 LVHM が誕生。
1989年 ルイ・ヴィトンミュージアムがパリ郊外のアニエール市にオープン。
1993年 ビジネスや旅行に用いるメンズのタイガー・ラインを発表。
1996年

「モノグラム・キャンパス」誕生100周年記念。
「ダミエ・ライン」が再登場し、革の変更を経て新生ダミエ・ラインとしてよみがえる。

1998年

アメリカ人若手デザイナー「マーク・ジェイコブス」がプレタポルテラインのディレクターに任命される 。
「マーク・ジェイコブス」が「モノグラム・ヴェルニ」ラインを発表。

1999年 「モノグラム・ミニ」を発表。
2000年 「ダミエ・ソバージュ」「モノグラム・グラセ」ラインを発表 。
2001年 「モノグラム・グラフィティ」「ジュエリー・ライン」を発表。
2002年 「コント・ドゥ・フェ」ラインとルイ・ヴィトン初の時計「タンブール」を発表。
2003年

「スハリ・ライン」を発表。村上隆とマーク・ジェイコブスのコラボレーションでマルチカラーラインが登場。
4月ゴート・レザーの新作「サハリ」が登場。

このように、ルイ・ヴィトンは創業から1世紀半の歴史の積み重ねにより、皆様から愛 されるブランドの上位に位置するようになりました。我々質屋も決してなくならないであ ろう質草の一つとして、日々努力をして大切に取り扱っていこうと思っております。




 '05/03/13 水晶について (シトリン)

前回、前々回と水晶について書いていきました。水晶は多くの種類があります。それを一つずつお話していたら、「目利きのいろは」のテーマは、当分の間「水晶について」になってしまうので、あと2,3 よく見かける宝石(水晶)について、簡単にお話していきましょう。
 ロック・クォーツ、アメジスト、ときましたら、次はシトリンでしょうか。「シトリン」は黄色から黄褐色をした水晶をいいます。古くから黄水晶として知られてきましたが、意外な事にナチュラルカラーの(処理をしていない)良質のシトリンはほとんどありません。市場に多く出回っているシトリンのほとんどがアメジストを熱処理してつくられたものです。
 「シトリン」は、フランス語でレモンを表す「シトロン」が語源であるといわれています。1883 年にブラジルで、まったく偶然からアメジストを加熱すると、鮮やかな黄色に変化することがわかりました。多くのアメジストが約450 ℃で加熱されると、シトリンに変化します。現在は、ほとんどの「シトリン」が熱処理をしています。これはエンハンスメントといい、その宝石がもともともっている潜在的な美しさを人的手段で引き出してやろうとする改良の事で、その効果が永続するものでなければなりません。ということで、処理した「シトリン」の色が退色することは決してないのです。
 質屋から見まして「シトリン」という宝石は、水晶全般が高価ではないという事もあり、比較的に安価な宝石のひとつです。ただ注意しないといけないのは、黄色の宝石には「シトリン」だけではないという事です。同じ色の宝石は、主に「インペリアル・トパーズ」や「イエロー・サファイア」などがあるのです。その二種類の宝石は「シトリン」とは違い値段をふむ事が出来ます。ですから、「シトリン」をこの二種類の石と混同しないよう、重々注意をして取り扱わなければならないのです。




homepageへ